がん治療には「手術、抗がん剤、放射線」の3大療法があります。がん3大療法は、学会や厚生労働省や大学病院や大規模病院が強力に支持しています。絶対視しているといってもいいでしょう。

しかし医師のなかには、がん3大療法を否定的にみている人や、完全に否定している人もいます。しかもそれらの医師のなかには、長年がん3大療法に携わったうえで、3大療法ではがん患者さんたちを救えないと考えている人もいます。

真正面からがん治療に取り組みながら、がん3大療法をネガティブにとらえている医師たちは、「代替医療」を推奨することが多いようです。

彼らの見解を知ることは、がん患者さんにとっても、家族にとっても、まだ、がんを発症していない人にとっても有益であるといえます。

この記事は、末期がん患者さんにコロイドヨードなどの代替医療を提供している前山和宏医師の見解をベースにしています。前山医師は、現在は自身でメディアートクリニック(東京都中央区)というクリニックを開設していますが、以前は国立東京第二病院(現・国立病院機構東京医療センター)で、がんの3大療法で末期がん患者さんを治療していました。

 

「標準」という言葉に違和感がある

がん3大療法には「標準治療」という別名があります。前山医師は標準という言葉に違和感を持っています。前山医師は自身の著書「末期がん 逆転の治療法」(幻冬舎)のなかで次のように指摘しています。

  • 標準治療ということは、患者さんのがんの進行度、組織型などによって治療がマニュアル化されているということ
  • 医師は一律の治療をすればよい
  • 患者さんは医師から「この治療をします」と言われ、何の疑問も抱かずにその治療を受ける

なぜこのことが問題なのでしょうか。検査でがんが見つかり、医師から「手術をしましょう」「抗がん剤を使いましょう」「放射線治療をしましょう」と言われ、それを受け入れることは、多くの日本人にとって違和感など持たない普通のことのように思えます。

前山医師の問題提起は次のとおりです。

「医師は個々の患者さんのことを考えない」

がん治療の標準化とマニュアル化によって、医師が個々の患者さんのことを考える必要がなくなった、と前山医師は批判しています。がん3大療法の医師たちは、前山医師のこの見解に反発するでしょう。彼らは、患者さんの検査結果や容体などを詳細に観察して、その時々の最善の治療を提案、実行している、と自負しているはずです。

しかし前山医師は、「標準」という言葉を使ってしまったことにより、医師が標準以外のことをしなくなっていることを嘆いています。

がん3大療法を強力に推奨している大学病院や大規模病院では、ほぼ、がん3大療法「しか」提供していません。最近は、免疫療法に取り組む病院もありますが、しかし免疫療法は学会や厚生労働省が認定している治療法で、がん3大療法に次ぐ第4の治療法になりつつあります。

ところが、大学病院や大規模病院では、コロイドヨードや超高濃度ビタミンC療法、フコイダンなどの代替医療は扱いません。むしろ代替医療は否定的にみられています。代替医療をがん患者さんに積極的に使っている前山医師からすると、代替医療を患者さんに提案しないことは「個々の患者さんのことを考えない」なのです。

「患者さんは思考停止に陥っている」

前山医師は患者さんの心理についても言及しています。

患者さんはなぜ、がん3大療法に対して何の疑問も抱かずに受け入れているのでしょうか。患者さんは本当に、がん3大療法を納得しているのでしょうか。前山医師は、がん患者さんが思考停止に陥っているとみています。

がん患者さんが思考しなくなったのは、日本のがん治療で、標準治療が確固たる地位を獲得しているからです。

しかし標準は「スタンダード」であって「スペシャル」ではない、と前山医師は指摘します。なぜ1人ひとりのがん患者さんにスペシャルな医療を提供しないのか、と考えています。前山医師は、次に紹介するように、がん3大治療(標準治療)を辛辣(しんらつ)に批判しています。

「楽をするため」「訴えられないようにするため」

多くのがん治療医が標準治療にこだわり、標準治療しかがん患者さんに提供しないのは、次の2つの理由があるからだと前山医師は考えています。

  • 医師が楽をするため
  • 医師が訴えられないようにするため

かなり強い表現を使って批判しています。その真意はこうです。

がん3大療法を手掛けている医師はとても忙しく、個々の患者さんのための治療を検討する時間がありません。学会も厚生労働省も認めている、標準と呼ばれる治療があるのであれば、「これが標準です」と患者さんに示すことができます。これは医師にとっては楽な作業と考えられます。

そして標準治療を行っていれば、それは国あるいは学会が定めているものなので「結果がどうなろうと」医師は訴えられません。

がんは治療が難しい病気であり、人を殺す病気なので、死という結果を避けられないことが少なくありません。しかし医師が治療方法を間違えたことで患者さんが死亡すれば、患者さんの遺族は医師を訴えることができます。遺族側が、医師の治療が間違っていたことを証明できれば、その医師を雇っている病院は多額の損害賠償金を支払わなければなりません。そして医師も「間違った治療をしてがん患者さんを死なせた先生」というレッテルを貼られることになります。

しかし標準治療を実施していれば、裁判所は医師に過失はないと判断するでしょう。過失がないという判断は、「医師は正しい治療をした」ということに他なりません。

誰が医師でも、標準治療を提供しようと思うでしょう。そして「標準治療しか提供したくない」と思うでしょう。

それでよいはずがない、と前山医師は考えています。

前山医師の「手術の否定」の仕方

医師のなかには、がん3大療法を全否定している人がいます。

しかし前山医師は、がん3大療法を批判しつつも、否定はしていません。この点は、代替医療に興味を持っている方も、見誤らないようにしたいところです。代替医療はあくまで代替です。つまり2番目あるいは3番目の選択肢です。第1選択肢は、がん3大療法であることは、前山医師も明確には否定していません。

例えば、がん治療における手術については、次のように述べています。

手術のよい点もある。それは体のなかのがん細胞の数が圧倒的に少なくなることだ

前山医師の「手術の否定」の仕方をみていきましょう。

手術は標準のなかの標準

がん3大療法といいますが、この3つの治療法のなかにも序列があります。トップは手術です。手術は標準のなかの標準といえます。がんの治療はとても単純です。がんは、正常細胞が突然変異して異常細胞になり、異常細胞が体内で猛威を振るって生命を維持する機能を破壊する病気です。次のようなイメージです。

<がんでない状態>
がんでない状態

<がんの状態>
がんの状態

がんの状態をがんでない状態に戻すには、異常細胞を取り除けばいいのです。それで、完全に取り除くことができる手術が、がん治療では第1選択肢になるのです。

前山医師は、日本のがん医療の大前提を次のようにとらえています。

  • がんは早期に発見して、手術で完全に切り取ってしまわない限り、治ることは絶対にない(白血病、悪性リンパ腫などの血液系がんは除く)

そして前山医師は、この、日本のがん医療の大前提を次のように批判します。

  • 手術なしで治せないのならば、まともな医療とはいえない

「間違った医療」「受けるべきではない医療」とまでは言っていませんが、まともではないと指摘しています。なぜでしょうか。
それは、手術後のがん患者さんの体からがん細胞がなくなったかどうかは、誰にもわからないからです。
例えば、がん細胞が次のような状態にあると、手術では取り切れません。

<手術困難ながんの状態:その1>

手術困難ながんの状態01
上部の異常細胞は手術で取り除くことができますが、中央の異常細胞は取りこぼしてしまうかもしれません。そうなればまたがん細胞が増殖します。

<手術困難ながんの状態:その2>

手術困難ながんの状態02
臓器のほとんどががん細胞(異常細胞)になってしまった場合、がん細胞を取り除くことは臓器を摘出するのと同じです。胃であれば取り除いても死亡することはありませんが、肝臓をすべて取り除くことはできません。また、多臓器に転移してしまえば、それらをすべて取り除けば生命を維持することはできないでしょう。

前山医師の「抗がん剤の否定」の仕方

抗がん剤については、前山医師はさらに強く批判しています。著書のなかでは「抗がん剤でがんは治らない」と断言しています。抗がん剤は完全治癒を目指すための治療ではないからです。これは、がん医療界では当然視されていますが、知らない患者さんが多いのが現実です。
そして、抗がん剤の成分が、生物にとって有毒であることも、医療界では当然のことと理解されています。

抗がん剤によって確かにがん細胞は死滅しますが、同時に正常細胞も死んでしまいます。正常細胞が大量に死滅して、患者さんが苦しい思いをすることを、抗がん剤の副作用といいます。前山医師は、抗がん剤によって体が弱っていくことを問題視しています。

前山医師は、抗がん剤がすべて悪いとはいわないとしながらも、最初から完治を求めず延命のみを狙った治療とみなしています。
前山医師はかつて、がん3大療法をしていた現場にいました。そこで「私は、抗がん剤の副作用が軽いから」と言っていたがん患者さんが、抗がん剤を受けたあとに突然「へろへろ」になる様子を何度も見てきました。前山医師はこの状態を「あるとき突然ガックリ現象」と呼んでいます。
がん患者さんをそのような目に遭わせたくないから、前山医師は代替医療を選択しました。

「放射線」はそれほど批判していない

がんの放射線療法では、X線、ガンマ線、電子線などをがん細胞に当てて、遺伝子を破壊します。
前山医師は、放射線療法についてはそれほど強く批判していません。
放射線療法にも副作用があって、主なものは、全身倦怠感、食欲不振、皮膚障害などです。放射線療法で体力が低下して「へろへろ」になって入院する人もいます。

しかし放射線療法は臓器を温存でき、痛みの緩和にもつながります。機器が進化して、正常細胞を傷つけることが少なくなりました。

放射線療法を最後の手段としてとっておく患者さんについて、前山医師は「それも正しい判断だと思う。がん治療のステップはさまざまでよい」と述べています。

まとめ~だから代替医療に期待する

前山医師は「だから」代替医療を末期がん患者さんに提供することにしました。そのために、がん3大療法を提供している病院を辞め、自身でクリニックを開設しました。

日本のがん医療の大前提は「早期に発見して完全に切り取ってしまわない限り、治ることは絶対にない(血液系がんは除く)」です。それでは患者さんは、がん細胞を完全に切り取れなければ、完全治癒をあきらめるしかありません。

そして抗がん剤を使っても結局は命を救えないケースを何度も見てきて「もっとまともな医療はないのだろうか」と思いました。
コロイドヨードなどのがんの代替医療は、患者さんのつらさや苦しさが少ないことが最大のメリットです。
前山医師は何人ものがん患者さんと向き合いながら、そのような確信に至り、コロイドヨードをはじめとする代替医療をポジティブに捉えているようです。

コロイドヨードについては以下のURLでも詳しく解説していますので、参考にしてみてくださいね。