前山和宏氏という、コロイドヨードを使った「がん治療」を行っている医師がいます。前山医師は現在は自身でクリニックを経営していますが、以前は国立東京第二病院(現・国立病院機構東京医療センター)で、がんの3大療法に携わっていました。
がん3大療法とは、手術、抗がん剤、放射線を使った治療のことです。

コロイドヨードを使った治療は代替医療(だいたいいりょう)といいますが、大学病院や大規模病院ではほとんど提供していません。
前山医師は、がん3大療法に否定的な考えを持っていて、コロイドヨードを積極的に評価しています。
なぜ、がん3大療法に携わっていた医師が、コロイドヨードに注目したのでしょうか。前山医師の著書から、コロイドヨードによるがん治療の実態に迫ってみます。

がん3大療法の意義を疑問視しているから

前山医師は、3大療法にネガティブな印象を持っていて、コロイドヨードにはポジティブな見解を示していますが、それでも「3大療法は絶対に受けるな。コロイドヨードのほうが治る確率が高い」とまでは断定していません。
この微妙なスタンスは覚えておいてください。そのうえで、なぜ前山医師は3大療法をネガティブにとらえ、コロイドヨードをポジティブにとらえているのか考えていきましょう。

人間の可能性を無視している

前山医師は、がん3大療法をかなり劣っている医療であるとみなしています。
その理由を箇条書きにします。

このことをまとめると次のようになります。

1)手術でがんを切り取ったとしても、その体にがんが発症した環境は変わらない
2)抗がん剤でがんと共存できたとしても、とても苦しく身体的犠牲が大きすぎる
3)がん3大療法に携わる医師は、末期がんになって治療効果がなくなると「治すことはできません、余命○カ月です」と言う

(1)と(2)は、がん3大療法を手掛ける医師も否定しないでしょう。問題は(3)です。がん3大療法は、がんが治らなくても終了する時期が到来してしまうのです。
例えば手術は、がん細胞が体中に転移したら実施できません。体の至る場所にメスを入れたらそれだけで死亡してしまうからです。
抗がん剤は、副作用に耐えうる体力が残っていないと続けることはできません。つまり、抗がん剤の副作用で体が一定程度弱ってしまったら、それ以上抗がん剤治療を続けることはできません。

放射線治療は放射線という体に害のあるものを浴びせるので、放射量が決まっています。

前山医師は、「治すことはできません、余命○カ月です」と宣告しなければならない、がん3大療法に怒りに似た感情を持っています。

「なぜ、治らないと決めつけるのでしょうか」
「あなたは確実に死ぬ、と洗脳しているようなものだ」
「絶望や諦めを感じれば、生きる気力が衰え、免疫力が著しく低下する」
「医師は患者さんに人間の可能性を前向きに語るべきだ」

――と強い言葉を使って非難しています。

前山医師は末期がん患者さんに次のように言ってあげるそうです。

  • 「余命」はその病気、病態に対しての平均的なもので、1人ひとりの患者さんの体調や生命力を勘案したものではない
  • 余命3カ月と宣告されながら、数年生きたり、完治したりする人もいる
  • 余命宣告は人間の可能性を全否定している(それはおかしい)

前山医師の、がん3大療法に対する考え方は理解しやすい内容だと思います。
その前山医師が、コロイドヨードを「優れたがん治療法」と呼んでいます。その理由をみていきましょう。

自宅で簡単にひとりで治療できるから

前山医師が考える、優れたがん治療法の条件は次のとおりです。

  • 自宅で治療できる
  • ひとりでできる
  • 簡単にできる治療である
  • 副作用がない、または少ない

いずれもとても重要な要素であり、コロイドヨードはこのすべてに当てはまるので、ひとつずつ詳しくみていきます。

自宅で治療できる

がん3大療法は、いずれも自宅ではできません。抗がん剤と放射線治療は入院しない外来治療が可能ですが、原則、在宅医療では行いません。手術は必ず入院が必要になります。

コロイドヨードは液体であり、なおかつ医師の目の前で飲まなければならないものでもないので、自宅で服用できます。

がんを発症していても、仕事をしたり、外見上は元気に振る舞ったりすることは可能です。そのような人が病院に行くと、気が滅入ってしまうでしょう。待合室での待ち時間も無駄な時間です。

自宅で治療を行えるのであれば、そのほうが患者さんのデメリットは小さくできます。

ひとりでできる

コロイドヨードを使った治療は、患者さんがひとりでできます。液体を飲むだけだからです。ひとりで治療できれば、医師や患者に支援してもらう必要がないので、自宅で実施できます。

また前山医師は、ひとりで治療できるメリットとして、家族の負担が小さくなることを挙げます。がんを発症すると家族の負担が増え、そのストレスから家族が崩壊することがあると、前山医師は指摘しています。

ひとりで治療できれば、その心配は減るわけです。

簡単にできる治療である

簡単に治療できることのメリットは、継続できることです。医療は一般的に、簡単にできる治療法から試していきます。それは、患者さんの負担が少ない方法で治療効果が生まれるなら、そのほうが望ましいからです。また、簡単な治療なら患者さんの協力が得られやすいので、治療効果を期待できます。

繰り返しになりますが、コロイドヨード治療は液体を飲むだけなので、簡単です。

副作用がない、または少ない

副作用がない医療はない、といってもいいでしょう。抗がん剤の副作用はかつてより小さくなったとは言われています。また、副作用の症状を和らげる、支持療法という治療も開発されています。しかしそれでもなお、苦しさは厳然として存在します。

国立がん研究センターによると、抗がん剤の副作用には次のようなものがあります。

・アレルギー反応・嘔吐・血管痛・発熱・便秘・疲れやすい・だるい・食欲不振・下痢・口内炎・胃もたれ・脱毛・皮膚の角化・皮膚のシミ・手足のしびれ・膀胱炎・白血球の減少・貧血・血小板減少・肝臓障害・腎臓障害

副作用の種類や強さは、抗がん剤の種類や投与量によって異なりますし、期間によっても違ってきます。副作用は患者さんの治療意欲を削ぎます。

それでも副作用を覚悟して抗がん剤を受けなければならないのは「副作用が出るくらい投与しないと効かない」からです。薬の量を少なくすれば副作用も減りますが、それではがん細胞が死滅せず、そもそも治療の意味がなくなってしまいます。

そして、がんを死滅させるくらい抗がん剤を投与すると、正常細胞まで死んでしまいます。正常細胞は体の機能を正常に保っているので、それが死んでしまうと体が正常に機能しません。それが副作用です。

前山医師はコロイドヨードのがん治療について、「副作用は今のところ発見されていない」と述べています。

前山医師のヨードに関する見解

冒頭で紹介したとおり、前山医師はかつて、がん3大療法を使った治療をがん患者さんに提供していました。ところが、がん3大療法は患者さんに「優しくなく」「効果が小さい」と感じるようになりました。それで前山医師は、「優しく」「効果のある」がん治療を目指して、さまざまな物質を探し始めました。

ようやく見つけたのがヨードでした。

ヨードとは、コロイドヨードとは

ヨードとはヨウ素ともいい、元素のひとつです。ヨードチンキやうがい薬など、消毒薬として数百年前から使われていました。
ヨードは極めて特殊な性質があり、原液を0.1g飲んだだけで死ぬことがある毒なのですが、必ず体内に蓄えておかなければならない必須成分でもあるのです。

喉に甲状腺という器官があるのですが、そこで成長や新陳代謝に関わる甲状腺ホルモンという重要なホルモンがつくられています。ヨードは甲状腺ホルモンをつくるのに欠かせない物質です。

つまりヨードと人間は「多量は絶対ダメだが、少量は絶対必要」という関係にあるのです。

ヨードをがん治療に使い始めたのはヨーロッパです。がん化した細胞を体外に排出する効果が期待できることがわかりました。しかし、いくらがん細胞に効果があるといっても、がん患者さんに大量のヨードを投与することはできません。
そこでヨードを加工して、体に悪影響を与えずに、がん細胞だけに効果をもたらすようにしました。それがコロイド化です。

コロイドとは、2つ以上の物質が混ざり合った液体の状態の名称です。コロイドヨードとは、ヨードをコロイド状にしたもの、という意味です。

コロイドヨードは特殊な液体にヨードを混ぜたもので、この加工により正常細胞を傷つけず、がん細胞だけに届く効果が期待できるようになったのです。

なぜがん細胞にだけ効果を発揮するのか

前山医師によると、コロイドヨードには次のような効果が期待できます。

1)がん細胞、老化した細胞、炎症を起こした細胞を体外に排出する
2)活性酸素や有害物質を体外に排出する
3)正常細胞を活性化させる
4)身体機能を高める
5)副作用が今のところ発見されていない
6)耐性がみつかっていない
7)体内に蓄積しない

(1)~(4)から、コロイドヨードには、体によい効果をもたらし体に悪い作用を除外する性質があることがわかります。(5)は先ほど紹介したとおりです。
(6)の耐性とは、薬が効かなくなる状態のことです。例えば抗がん剤の場合、治療の途中で薬の種類を変えることがあります。最初に使った抗がん剤に対して耐性ができてしまったからです。

しかしコロイドヨードの治療では、耐性が現れないことがわかっています。

そして(7)の「体内に蓄積しない」についてですが、コロイドヨードは服用してから2時間ほどで体外に排泄されることがわかっています。ヨードが体内に過剰に蓄積されると「毒」になってしまうので、コロイドヨードの排出のしやすさはとても重要な性質といえます。

ここまでの説明で、次の疑問がわくと思います。

「なぜコロイドヨードは、がん細胞だけを死滅させ、正常細胞には悪影響を及ぼさないのか」

前山医師は、細胞膜が関係しているのではないかと推測しています。がん細胞は、正常細胞が突然変異した異常細胞で、変異する過程で細胞膜の性質が変化したのではないか、と考えられます。

コロイドヨードは、がん細胞の細胞膜は通過するが、正常細胞の細胞膜は通過できない、と考えられます。ただ前山医師によると、コロイドヨードは最初から細胞膜の性質を考えて開発されたのではなく、「結果的にそうなった」といいます。

前山医師のコロイドヨード療法の方法

前山医師のクリニックでは、30ミリリットルの溶液のなかに450ミリグラムのヨードが入っているコロイドヨードを使っています。前山医師はコロイドヨードを、内服(飲む方法)や注射や点滴などの方法で、患者さんに投与しています。

内服での投与

内服では、1回につき30ミリリットルを患者さんに飲んでもらいます。末期がんの患者さんには2時間おきに飲むことを推奨しています。体が大きい人には50ミリリットルを薦めています。内服なら、患者さんが自宅で自分で行うことができます。

注射または点滴での投与

注射または点滴では、50ミリリットルの投与から始めて、200ミリリットルまで少しずつ増やしていきます。投与タイミングは内服と同じです。注射または点滴は、前山医師のクリニックで行うことになります。
内服の場合、コロイドヨードが胃腸から吸収されて血管内に入っていき、がん細胞に届きます。一方、注射または点滴は、コロイドヨードを直接血管内に投与できるので、より効率よくがん細胞に作用できます。

その他の投与方法

前山医師は肺がんの患者さんには、気管支喘息用の吸入器でコロイドヨードを霧状にして吸わせる「吸入方式」も行っています。大腸がんの患者さんには、肛門からコロイドヨードを注入する「注腸方式」を使います。

その他、膣内注入、胸腔内注入、腹腔内注入、膀胱内注入、局所注入などを実施しています。

副作用ではないが「出てくる」反応とは

先ほど、コロイドヨードには「今のところ副作用は発見されていない」と紹介しました。しかしコロイドヨードの治療を始めると、次のような反応が出ることがあります。

1)発熱
2)がんのある部位の熱感と疼痛(痛み)
3)皮膚のかゆみ、湿疹
4)口内炎
5)下痢
6)リンパ節の腫れ
7)腫瘍マーカーの急激な上昇

これらは副作用のようにも思えますが、前山医師は、(1)(2)(6)は「コロイドヨードが、がんと闘っていることで起きる反応」と考えています。

(3)(4)(5)は一種のデトックスと考えられます。

(7)の腫瘍マーカーとは、がん細胞が活発に活動しているときに発生する物質のことで、血液検査で調べます。腫瘍マーカーが高い数値になると、がん細胞が増えていると考えられます。

つまり一般的には、腫瘍マーカーが急激に上昇すると、危機的状況に陥ったと考えられます。

しかし前山医師は、がん細胞が短時間に大量に崩壊したことで、がん細胞が活発に活動しているときに発生する物質も大量に出た、と考えています。したがって、この場合に限っては腫瘍マーカーの急上昇はむしろ「よい反応」と考えることができます。

まとめ~勇気ある医師の発言

ここで紹介したコロイドヨードの解説は、前山医師の著書「末期がん 逆転の治療法」(幻冬舎)をベースにしています。

コロイドヨードは学会や厚生労働省が、がん治療薬として認めていないため、これを末期がん患者さんに使うことについて否定的な医師もいます。

しかし前山医師は、「がん3大療法が効かなくなったら治療を中断して緩和医療をするしかない」という考え方を受け入れることができませんでした。それで、コロイドヨードを安全に投与する方法を選択したわけです。勇気ある行動といえます。

ただ、前山医師は、がん3大医療を否定的にみていますが、完全否定していないことは申し添えておきます。著書のなかでも、コロイドヨードのメリットとして「抗がん剤やその他の治療と併用できること」を挙げています。