がんの代替医療の正式名称は「相補代替療法」といいます。標準的ながん治療を補ったり、標準的ながん治療の代りになったりする医療です。
ところがネット検索をして現れる代替医療の中には、いかがわしい「民間療法」が含まれていることが珍しくありません。
ここで紹介する「代替医療」はすべて、医師免許を持ち、がん治療の実績がある医師が行っているものです。
また、治療効果について「論争」がある代替医療については、そのことを明記しておきました。
「代替医療」と「三大療法」と「民間療法」の違い
個々の代替医療を紹介する前に、言葉の定義をしておきます。
代替医療は実績のある医師が行う自由診療
「三大療法」は標準治療とも呼ばれ、国内のがん関連学会が推奨している「手術療法」「抗がん剤療法」「放射線療法」のことです。
さらに厚生労働省が「医療保険が使える医療」として認定していることも三大療法の特徴です。
代替医療と三大療法との関係は、原則、①三大療法の効果が出なくなった後に代替医療に移行する、②三大療法と並行して代替医療を行う――の2パターンになります。
ただ例外として、三大療法と相性が悪い代替医療があったり、三大療法を拒否する患者が代替医療を単独で受ける場合があります。
民間医療では多額の治療費を請求されることも
そして「民間療法」ですが、これは代替医療や三大療法と決定的に異なります。まず民間療法を行っている人は、医師ではない人や、医師免許を持っていても特殊な事情を持つ医師です。
また民間療法は、効果がないか、最悪、がんを悪化させて死を早めてしまう危険性があります。そして民間療法の多くは、多額の「治療費」を請求されます。
代替医療・三大療法・民間療法それぞれの特徴
3つの「医療・療法」を表にまとめてみました。
代替医療 | 医療保険の対象とならないが、医師が自由診療で行う。三大療法と併用することもある。 | 三大療法 | 厚生労働省や学会が推奨する医療。医療保険の対象。標準的な治療とされている。 | 民間療法 | 医師でない人が手掛けることもある。効果がないか、最悪、健康に害悪を及ぼす。 |
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超高濃度ビタミンC
がんの代替医療を手掛けているクリニックの多くが、超高濃度ビタミンC療法を導入しています。ビタミンCが持つ、「珍しくない物質」「健康に欠かせない栄養成分」というイメージが、医師にも患者にも受け入れやすいためでしょう。
食物では得られない濃度
ただ、超高濃度ビタミンC療法は、ビタミンCを多く含むレモンやパセリを大量に食べればよい、というわけではありません。
文字通り「非常に濃い」ビタミンCの液体を点滴注射する必要があります。
過酸化水素ががん細胞を消滅させる
ビタミンCは体内で過酸化水素を発生することが分かっています。その過酸化水素が、がん細胞を消滅させる、と考えられています。
過酸化水素は別名「オキシフル」「オキシドール」といい、医療現場でも一般家庭でも消毒液として使われています。ビタミンCを大量に摂取する狙いは、体内にオキシドールを発生させ、がん細胞を消毒することなのです。
正常細胞は酵素のお陰で影響を受けない
「正常細胞も過酸化水素によって消毒されてしまうのではないか」という疑問がわくと思いますが、そうはなりません。
正常細胞には「カタラーゼ」という酵素が含まれていて、カタラーゼは過酸化水素を分解することができるからです。
ところが、がん細胞はカタラーゼを少量しか持っていないので、過酸化水素によって消滅してしまうのです。
ただ超高濃度ビタミンC療法には、否定的な見方をする医師も少なくなく、医療界でも意見が分かれています。
フコイダン
フコイダンは昆布やメカブなど海藻に含まれる成分です。
ただフコイダンもビタミンCと同じように、海藻をたくさん食べてもがんへの効果は薄く、特殊な処理をしたフコイダンでないと治療の効果が出ません。
フコイダンはなぜ治るのかの「理屈」は分かっていない
「ある薬がある病気に効く」と言った場合、そこには「理屈」が存在します。薬の中のAという成分が体内でBという働きをして、Cを引き起こす結果、病気が治る、という「説明」ができます。
このような理屈や説明のことを「作用機序(さようきじょ)」といいます。
ところがフコイダンがなぜがん治療で効果をあげているのかについては、「作用機序がよく分かっていない」とされています。
つまりフコイダンは「がんを消滅させること」は分かっているが「どうやって消滅させているか」が分かっていない代替医療、とされているのです。
3つの方法でがん細胞を攻める
しかし、普段の食卓に並ぶ海藻が原料になっていることと、がん細胞を減らす効果があるとする研究結果が発表されていることから、フコイダンをがんの代替医療として使う医師がいるのです。
フコイダンが、がんを消滅させる方法は
- がん細胞にアポトーシス(自然死)を起こさせる
- がん細胞に対抗する免疫細胞を増やす
- がんに栄養を送る血管を抑える
の3つです。
がん細胞を自然死させる
正常細胞は一定期間が過ぎると自然死するのですが、がん細胞は自然死せず、患者が亡くなるまで増殖を続けます。
ところがフコイダンには、がん細胞を自然死に導く作用があるとされているのです。
腸に作用して免疫細胞をサポートする
免疫細胞とは、がんと闘う細胞のことで、腸の中に6割近く含まれています。フコイダンは腸の中の免疫細胞を活性化させる効果があるとされています。
がん細胞の「栄養経路」を断つ
がん細胞は、周辺の正常細胞から栄養を奪い取って増殖していきます。がん細胞は、正常細胞から栄養を吸い取るために周囲に新しい血管をつくります。
新しい血管ができることを、「血管新生」といいます。
血管新生は、緑内障という目の病気でも起きている現象です。
この血管新生によってつくられた新しい血管が、がん細胞に次々と「食糧」を送っているわけですが、フコイダンは血管新生を起こすときに必要なタンパク質の発生を抑えることで血管新生を起こしにくくしているのです。
栄養経路が断たれるため、がんが消滅するのです。
国立大学医学部もフコイダンを研究
また、鳥取大学医部の池口正英教授の研究所などが、フコイダンに制がん剤の副作用を抑える効果があることを発見し、アメリカで特許を取得しました。
制がん剤はがん細胞の増殖を抑える薬で、がん細胞を消滅させる抗がん剤とは異なります。ただ、制がん剤にも抗がん剤と同様に副作用があります。
同研究所は、制がん剤を使っている大腸がん患者の倦怠感が、フコイダンによって抑制できることを証明したのです。
コロイドヨード
コロイドヨードによる末期がんの治療も、超高濃度ビタミンC療法やフコイダン療法と同様に、私たちが普段食べている食材の中に含まれている成分をがん療法に使っています。
良い面と悪い面があるヨウ素
ヨードは「ヨウ素」といい、海水中に多く存在するミネラルのひとつです。土壌の中にも含まれています。
ヨウ素を多く含む食品は、昆布、ヒジキ、ワカメ、バター、鶏卵、味、イワシなどです。
ヨウ素には、適量を摂取しないと健康を保てない一方で、摂りすぎると健康を害するという性質があります。
ヨウ素を摂取しないとどうなる? | 甲状腺ホルモンがつくられなくなる。成長発達異常、精神発達の遅れ、動作緩慢、クレチン症を引き起こす。 |
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ヨウ素を摂取しすぎるとどうなる? | 甲状腺の機能低下、甲状腺腫、甲状腺中毒症を引き起こす。症状として体重減少、頻脈など。 |
長所を伸ばし、短所を消す
つまりヨウ素には「良い面」と「悪い面」があり、コロイドヨードはヨウ素の「良い面」だけを活かし「悪い面」を排除した製品なのです。
ヨウ素の良い面は、正常細胞を活性化させて、がん細胞などの異常細胞を体外に排除する効果です。
またヨウ素には微生物を死滅させる消毒作用があります。うがい薬にもヨウ素が含まれているのはそのためです。
ですので、がん患者としてはできるだけ多くのヨウ素を摂りたいところです。
しかしヨウ素には悪い面も多いので、ヨウ素を摂りすぎてしまうと、がん細胞を攻撃する一方で、別の健康被害をもたらしてしまうのです。
そこで「コロイド」が重要になるのです。
コロイド化することで効果が広がる
コロイドとは、大量の大きい物質と大量の小さい物質が均等に混ざり合う状態のことをいいます。
例えば砂糖水は、「大きな砂糖の粒子」が「小さな水の分子」と均等に混ざり合った状態です。
また霧もコロイドで、「大きな水の分子」と「小さな空気の分子」が均等に混ざり合った状態になっています。
物質はコロイド状にすることで様々なメリットを発揮します。例えば、水に物質が均等に溶けているので、物質の効果を広い範囲に均等に伝えることができます。水の「流れる」性質が、物質の効果を拡散させるのです。
物質が水に溶けていない状態だと、固形の物質が1カ所にとどまっているだけなので効果が広がりません。
また、コロイド状の物質は「吸収」や「浸透」がしやすい性質があります。それで薬や化粧品の多くは、有効成分をコロイド状にしているのです。
ヨウ素を吸収させてがん細胞を叩く
ヨウ素が「そのままの状態」では、体内に吸収しにくいですし、吸収できたとしても細胞レベルにまで届きません。
コロイド化したコロイドヨードですと、細胞に吸収されます。コロイドヨードを吸収したがん細胞は、ヨウ素の消毒作用によって死滅してしまいます。
そしてコロイドヨードは正常細胞を傷つけないとされているのです。
まとめ~安心して使えることが大切
ここに紹介したビタミンC、フコイダン、ヨードは、元々人の体に必要な物質を、がんの代替医療として応用しているので安心です。
ただ、手術、抗がん剤、放射線療法のがん三大療法を受けている方は、代替医療を受ける場合は必ず主治医の指導を受けてください。