近頃、よく耳にするようになってきた「5-ALA」。
ウイルスや疲労へはたらきかける効果が期待されている、注目の成分です。
ここでは、5-ALAがどのような成分で、どういった効果が期待されているのかをご紹介します。
公表されている論文から臨床試験の効果も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
5-ALAとはいったい何?
5-ALAは「ファイブエーエルエー」もしくは「アラ」と読みます。
生命の活動に必須だとも言われる5-ALA、実は意外にも身近なところに存在する成分です。
ALAは「Amino Levulinic Acid(アミノレブリン酸)」の頭文字を取っています。
アミノ酸の一種
5-ALAは、アミノレブリン酸とも呼ばれるアミノ酸の一種として知られています。
アルファリポ酸やアラニンも「ALA」と記載されることがありますが、これらの成分とはまったくの別物です。
5-ALAは人間の生命を維持するために必須の成分として注目を集めています。5-ALAがなければ人間は生きるために必要なエネルギーを作り出すことができません。
エネルギーを作れなければ、手足を動かすことも心臓を動かすこともできないため、5-ALAは人間が生きていくうえで必要不可欠なアミノ酸なのです。生命の誕生にも深い関わりがあることから「生命の根源物質」と呼ばれることもあります。
あまり聞き慣れない成分かもしれませんが、ワインや大豆、日本酒などに含まれていることが特徴です。
ミトコンドリアの働きをサポート
エネルギーを生み出すために5-ALAが必要になるのは、ミトコンドリアの働きと深く関わっているからです。
ミトコンドリアとは、細胞の中に存在している器官のことで、エネルギーを合成する働きを行っています。人間の活動に必要なエネルギーの90%以上がミトコンドリアで作られているため、5-ALAは生きていくのに必須の成分だと言えるでしょう。
人体で使われるエネルギー,ATPの90%以上がミトコンドリアで行われる内呼吸で作られる.内呼吸はTCAサイクルとこれに連動する電子伝達系で構成されているが,もっとも重要なのは体内で酸素を使う唯一の反応である電子伝達系の複合体IVである.
人間の体には少なくとも3,700兆個以上のミトコンドリアが存在しています。5-ALAはミトアコンドリの中に多く存在しているため、ミトコンドリアの働きをサポートする効果が期待されているのです。また、5-ALAを摂取することでミトコンドリアそのものが増殖したとの報告もあります。
5-ALAは代謝されてヘムとクロロフィルになる
5-ALAを摂取すると、まずプロトポルフィリンIXという成分になります。このプロトポルフィリンIXに鉄が結合するとヘムに、マグネシウムが結合するとクロロフィルへとなることが特徴です。
体に酸素を運ぶヘモグロビンを構成するために必要な成分です。鉄は酸素と結びつきやすいため、鉄を含んでいるヘムは酸素を体中に運ぶ働きに優れています。酸素がなければエネルギーを産生することもできないため、生命活動に必須の成分と言えるでしょう。
抗酸化作用があることで知られている成分です。老化やさまざまな疾患と関わりがある活性酸素の働きを抑え、健康に導いてくれる効果が期待されています。消臭や殺菌効果があることもわかっており、口臭を抑えるための医薬品の主成分としても使われています。
5-ALAとアルファリポ酸の違い
5-ALAはアミノ酸の一種ですが、アルファリポ酸はアミノ酸ではなく脂肪酸の一種です。5-ALAと同様にミトコンドリアの働きをサポートする成分として知られています。アルファリポ酸はエネルギーを作り出すときに補酵素として働くことが特徴です。
5-ALAはミトコンドリアそのものの働きにアプローチしますが、アルファリポ酸はミトコンドリアがエネルギーを作る働きに特化してサポートしていくことが分かっています。エネルギーの産生に必要な成分であることから、効率よく体を動かすために役立つ成分として有名です。
また抗酸化作用もあるため、美容や健康のサポート成分としても期待されています。ただし5-ALAのようにヘムやクロロフィルには代謝されないため、体中に酸素を運んだり消臭や殺菌効果を示したりする働きはありません。
5-ALAに期待されている効果
人間が生きていくうえで切っても切り離せないミトコンドリア。このミトコンドリアの働きに5-ALAは密接に関係しています。エネルギーを効率よく作り出すためにももちろん必要ですが、ほかにも多くの効果が期待されている成分です。
血糖値の値を正常に近づける
5-ALAは糖の燃焼をサポートし、血糖値を正常に近づける働きがあることが分かっています。摂取した糖を速やかにエネルギーに変換するため、血糖値の上昇を抑えられるのです。
日本では昔から現在に至るまで男女ともに糖尿病を患う可能性が高い水準のままであり、糖尿病は高血圧や脂質異常症と並ぶ生活習慣病の1つです。
「糖尿病が強く疑われる者」の割合は男性19.7%、女性10.8%である。この10年間でみると、男女とも有意な増減はみられない。年齢階級別にみると、年齢が高い層でその割合が高い。
引用元: 令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要
糖尿病を治療するためには運動療法や薬物療法が基本とはなりますが、5-ALAが血糖値をコントロールするサポートをしてくれることが期待できるでしょう。
脂質代謝を改善する
5-ALAには、脂質を代謝する働きがあります。脂質は体を動かすエネルギー源として大切なものですが、摂りすぎは肥満の原因です。5-ALAを摂取することで脂質の代謝が盛んになるため、体重管理に役立つことが期待されています。
睡眠の質を改善する
ぐっすりと深い眠りにつくために必要なのが、メラトニンと呼ばれるホルモンです。メラトニンは夜になると分泌され始め、催眠作用を示します。
メラトニンの原料となるが、セロトニンです。幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンが代謝されることでメラトニンが作られます。
5-ALAは、メラトニンの原料となるセロトニンを増加させる働きがあるため、睡眠の質を改善させることができるのではと考えられているのです。
エネルギーを作り出すサポートをする
5-ALAがミトコンドリア内に多く存在することから、エネルギーを効率よく作る手助けもしてくれます。とくに年齢を重ねることで体を動かすのが億劫になってきた方に向いているでしょう。
ミトコンドリアに含まれるSOD2の量は加齢に伴って減少し、ミトコンドリアの質が低下することがわかりました。
引用元: KOSE 細胞内の「ミトコンドリア」
ミトコンドリアは、加齢によってどんどん数が減り、さらに質が低下していきます。36歳時点でのミトコンドリアの働きを100%とすると、67歳では約60%しかありません。必要なエネルギーのほとんどを作っているミトコンドリアの働きをサポートすることで、いつまでもアクティブに動きたい方を応援します。
免疫系の働きをサポートする
体を菌やウイルスなど、異物の侵入から守っている免疫系。ときには免疫系が強く働きすぎることで、自分自身を異物と見なして攻撃してしまったり、花粉やホコリのようなどに過剰に反応してしまったりします。5-ALAは免疫細胞が働き過ぎるのを抑える効果が認められているため、免疫機能を調整できることが特徴です。
癌細胞を見つけて治療する
5-ALAが代謝されてできるプロトポルフィリンIXは、癌細胞に蓄積する性質があることが分かっています。また、青色の光をあてると赤色の光を跳ね返すことも特徴です。そのため5-ALAを使うことで、どこに癌細胞があるのかを見つけ出すことができます。
プロトポルフィリンIXに光をあてることで、癌細胞を攻撃する活性酸素を発生させることも分かっているため、5-ALAは癌細胞の発見と治療に貢献するのではと期待が持たれています。
5-ALAを使って実際に行われた臨床試験
では、実際に5-ALAを使ってどのような臨床試験が行われているのでしょうか。発表されている論文から具体的にどのような効果があったのかをご紹介します。
ウイルスの感染を阻止する効果
世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因であるSARS-CoV-2に対して、5-ALAが効果を示すことが分かりました。5-ALAの代謝物であるプロトポルフィリンIXやヘムがSARS-CoV-2の感染を阻止することが明らかになったのです。
さらに5-ALAは、ウイルス以外の細胞、つまり人間の細胞には毒性を示しません。COVID-19に感染した患者の回復時間にもよい影響を与えたことから、治療に使えるのではと現在も研究が進められています。
また、5-ALAと鉄剤を同時に服用してもらうことで、ヘムオキシゲナーゼを誘導することも判明しました。ヘムオキシゲナーゼは、すでにインフルエンザやHIV、エボラなどのウイルスに対して抗ウイルス効果を示すことが分かっているため、SARS-CoV-2に対しても効果を示すのではと期待されています。
尚、このことについては以下の記事でも詳しく解説しています。
疲労感を低減させる
5-ALAにリン酸を結合させた5-ALAP(5-アミノレブリン酸リン酸塩)を、日常的に疲労を感じている男女70人に8週間、毎日続けて摂取してもらいました。70人のうち35人は5-ALAPを含まないプラセボの錠剤を、残り35人は30mgの5-ALAPを含む錠剤を飲んでいます。
8週間飲んでもらった後、疲労感や仕事の捗り具合などをスコア化してもらったところ、5-ALAPを摂取したグループのほうが有意に疲労感などを軽減されていることが分かったのです。疲労感だけでなく、落ち込んだり塞ぎ込んだりなどネガティブな気持ちを改善することも分かっています。
運動効率を最大で102%上昇させる
高齢女性に対して5-ALAとクエン酸第一鉄ナトリウムを同時に摂取してもらったところ、運動効率が最大で102%上昇することが分かりました。行われたのは、62~68歳の女性10人に5-ALAとクエン酸第一鉄ナトリウムを含む食事と含まない食事(プラセボ)を摂取してもらい、サイクリング負荷試験をするという方法です。
プラセボの食事を摂ったグループでは酸素の消費量や二酸化炭素の排出量、乳酸の値に変化はありませんでした。一方で5-ALAとクエン酸第一鉄ナトリウムを摂取したグループでは、酸素消費量は12%、二酸化炭素の排出量は11%、乳酸の値は16%と有意に減少したのです。
またトレーニング時の強度は最大で102%増加しています。
参考: バイオメディカル研究所
このことから、5-ALAとクエン酸第一鉄ナトリウムを摂取することで、運動効率を上げられると考えられるでしょう。
2h-OGTT値を最大で約23mg/dL低下させる
2h-OGTT値とは、ブドウ糖を含む液体を摂取し、2時間後にどこまで血糖値が上がっているのかを調べた値です。軽度に血糖値が高い方154名を対象に5-ALAとクエン酸第一鉄ナトリウムを含むものを12週間にわたって摂取してもらったところ、摂取前と比べると2h-OGTT値を最大で約23mg/dL低下しました。
5-ALAとクエン酸第一鉄ナトリウムを含まないものを摂取したグループでは摂取前に160mg/dL前後だった血糖値が、12週間後の検査では185mg/dLにまで上昇しています。
一方で15mgの5-ALAとクエン酸第一鉄ナトリウムを摂取したグループでは190mg/dLを超えていた血糖値が170mg/dL前後に、50mgの5-ALAとクエン酸第一鉄ナトリウムを摂取したグループでは180mg/dL前後だった血糖値が165mg/dL前後にまで低下しました。
参考: 5-ALA研究会
睡眠の質を表すスコアが10週間で13.85改善される
睡眠の質を数値化するPIRS-20スコアを使った試験が行われました。スコアの値が低いほどよい睡眠が取れていることになります。
5-ALAを配合したサプリメントを40名の被験者を使って6週間にわたり摂取してもらいました。
5-ALAを含まないサプリメントを摂取したグループでは、摂取開始時に22.45だったPIRS-20は6週間目では19.95に減少しています。
5-ALAを含むサプリメントを摂取したグループでは、摂取開始時に29.95だったスコアが6週目には16.1にまで減少しました。
サプリメントの摂取を止めてさらに4週間後に再度スコアを調べたところ、20.65と摂取開始時よりも減少した値をキープしていたことも分かっています。
このことから、5-ALAは睡眠の質を改善し、さらに摂取をやめても効果が持続すると言えるでしょう。
まとめ
5-ALAはアミノレブリン酸とも呼ばれるアミノ酸の一種です。
ミトコンドリアに多く存在し、血糖値や脂質の値、睡眠の質などを改善したり、抗ウイルス効果を示したりすることが分かっています。
また癌細胞に蓄積して活性酸素を発生させる働きがあることから、癌の発見や治療に使える可能性も期待されている成分です。
今後、ますます注目されていく成分となることは間違いないでしょう。
当サイトでも、さらに5-ALAに関する調査とご紹介を続けていきたいと思います。