サプリメントでがんを「治療できるのか」という質問には、残念ながらNOと答えるしかありません。
日本の法律では、「がん治療に効果がある薬」と表現するには、学会や大学病院や厚生労働省による承認が必要です。しかしサプリはそのような厳しい審査を経ていないので、サプリでがんを治療できる、とは表記できません。
しかし、サプリメントを使った人のなかに、がんを「治した人はいるのか」という質問には、YESと答えることができます。
がん治療に携わっている多くの医師が、がん患者にサプリを勧めています。そして、その後にがんがなくなったり、がんが小さくなったりした人はいます。つまり、「サプリを使った後に、がんが治った人はいる」ということができます。
それでもなお、サプリ開発では治験や実証実験を行っていないので、やはり「サプリががんを治した」とはいえないのです。
しかしがん患者さんやその家族にとっては、「サプリを使った後に、がんが治った人がいる」という事実が重要です。さらに医師がそれをサポートしていることもキーポイントになります。
この記事では、医師免許を持っている現役の医師が実名を出して「がん治療との関係」を紹介しているサプリや補助食品に限って紹介します。
サプリメントと薬の違い
サプリと薬の違いを定義する方法はいくつかありますが、最も単純な違いは、「サプリは食品、薬は毒」という違いです。薬は病気の原因を破壊したり死滅させたり叩いたりします。したがって毒です。そして毒なので、薬を必要以上に飲むと副作用が起きます。さらに、毒なので病気が治ったら服用を中止します。
一方のサプリは、直接的には病気を攻撃しません。サプリの目的は、健康を高めることで病気と闘える体をつくることです。健康な人がサプリを飲めば、より健康になったり、病気をしにくい体になったりします。
サプリを飲む行為は、栄養価の高い食材を多く摂るのとほぼ同じです。だからサプリは食品に数えられます。
抗がん剤は薬であり、がん細胞を死滅させますが、同時に正常細胞も傷つけてしまいます。それで大きな副作用が発生します。
一方でがん患者さんに提供されるサプリや補助食品は、直接的にはがんを攻撃しません。したがって副作用はほとんど無視できるレベルです。
それでは具体的に、がん治療医ががん患者さんに提供しているサプリや補助食品を紹介します。
フコイダン
コロイドヨードとがん治療の関係について解説した「末期がん 逆転の治療法」(幻冬舎)の著者で、がん治療クリニックの院長である前山和宏医師は、フコイダンを使った治療も提供しています。
海藻由来の成分にがんの増殖を抑制する機能がある
フコイダンは海藻の「ねばねば」した成分で、100年以上前の1913年にスウェーデンで発見されました。ただ当時はまだ、がん治療に使われていたわけではありません。フコイダンに細胞の「過形成」を抑制する効果があることがわかったのは2002年のことです。
過形成とは、つくられすぎてしまう現象のことです。がんは、がん細胞が過形成された状態です。つまり、フコイダンに細胞の過形成を抑制する効果があれば、がん細胞の増殖を抑止できるかもしれません。
そして2005年に、フコイダンに悪性リンパ腫の細胞をアポトーシスさせる効果があることがわかりました。
アポトーシス「予定死」とは
アポトーシスは「細胞の予定死」という意味です。細胞にとって予定死は「悪いこと」ではなく「正常なこと」です。人の死と細胞の予定死はわけて考えてください。
例えば、事故などで肌の皮膚と脂肪がえぐり取られても、しばらくすれば皮膚も脂肪も回復します。回復するのは、細胞が増殖しているからです。しかし細胞の増殖は、皮膚と脂肪が元に戻ったところで止まります。これは細胞のなかに、「増える予定」と「一定程度増えたら増殖を止める予定」が組み込まれているからです。
また、骨の細胞も皮膚の細胞も、一定期間が過ぎたら死に、新しい細胞と置き換わります。古い細胞が死ぬことで新しい細胞が活躍できるわけです。
すべての正常細胞は、死ぬことが予定されています。ところが、がん細胞は死滅せず増え続けます。そしてがん細胞は、正常細胞を予定死の時期より早く死滅させてしまいます。
フコイダンは、がん細胞を予定死に導く効果があるのです。
アポトーシスを導くことの意義
フコイダンが、がん細胞をアポトーシス(予定死)に導く作用は、抗がん剤ががん細胞を攻撃するのとは異なります。どちらもがん細胞が消えることには違いないのですが、アポトーシスと攻撃による死滅は違います。
そして、フコイダンの効果が、攻撃による死滅ではなく、アポトーシスであるところに意味があります。
がん細胞を攻撃する抗がん剤は、頻繁に正常細胞も攻撃して壊してしまいます。しかしフコイダンは、アポトーシスに導くだけです。正常細胞は、フコイダンに導かれなくても予定死をするので、フコイダンから損傷を受けることはありません。アポトーシスをしないがん細胞だけが、アポトーシスに導かれて損害を被るのです。
がん患者さんがフコイダンを飲んでもほとんど副作用を起こさないのですが、それは海藻由来の成分だからではなく、フコイダンがアポトーシスを誘導するからです。
ω3系脂肪酸(DHA、EPA)
ω3は「オメガスリー」と読みます。ω3系脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸の一種で魚類、貝類、甲殻類、植物油に含まれている成分です。
ω3系脂肪酸には、αリノレン酸(ALA)やドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)があります。
ALAやDHAやEPAといった表記は、ドラッグストアで簡単に買うことができるサプリの成分になっているので、目にしたことがある人もいるでしょう。
さて、これらの正式名称や専門用語を使うと、難解な説明になってしまうので、この記事ではこれらを総称して「ω3」と表記して解説します。
「ω3とは、サプリでおなじみの成分のこと」と理解しながら読み進めてください。
三重大学医学部生命医科学専攻の見解
これから解説する内容は、三重大学医学部生命医科学専攻が公開している「がん治療における補助栄養剤の開発」という、一般の人向けの論文をベースにしています。その全文は以下のURLで読むことができます。
三重大学医学部生命医科学専攻の楠正人教授は、次のように述べています(肩書は2019年7月現在)。
B:ω3にさらしたがん細胞では、がんの進行に関与する物質(IL-6)の濃度が上昇しなかった
C:ω3にさらさないがん細胞では、IL-6の濃度が上昇した
D:ω3のサプリは、担がん患者さんの予後に悪影響を与えるCRPという数値を低下させることが期待できる(担がんとは、胆のうなどにできるがんのことです)
ω3が「体によい成分」であることは知られていた
ω3は従来から、次の作用があることがわかっていました。
- 炎症を抑える作用
- 心臓や血管を保護する作用
- 脳や神経を保護する作用
- 筋肉の活動を助ける効果
- 血液凝固を助ける効果
- 消化を助ける効果
- 生殖能力、細胞分裂、成長、脳の発達に深く関わる
- 関節リウマチの症を緩和させる効果
人間は体内でω3をつくることができないので、食事やサプリなどで体内に取り込む必要があります。
がんの進行と炎症とω3
がんが恐ろしいのは、増殖や転移が起きるからです。増殖や転移のことを、がんの進行といいます。楠教授によると、がんが進行するのは、がん細胞に備わっている特徴のためだけでなく、がん患者さんの炎症反応も影響しています。
がん患者さんの体が、がん細胞に反応して炎症を起こしやすい体質だと、がんが進行しやすくなります。
ここで思い出していただきたいのが、従来から知られているω3の作用です。炎症を抑える作用が、ω3にはあります。
楠教授は、ω3ががん患者の炎症反応を抑制すれば、がんの進行を抑制できるのではないかと考えました。
人が炎症反応を起こすと、血液中のCRPという成分が上昇するのですが、ω3を服用した患者さんはCRPの値が低下することがわかりました。つまりここからも、ω3を飲むと炎症反応を抑えることができる、ことがわかります。
そして、炎症反応を起こしているがん患者さんの血中では、IL-6という物質が増えていることもわかっています。がん細胞がIL-6をつくっているイメージです。
楠教授たちが、ω3にさらしたがん細胞と、ω3にさらさないがん細胞を比較したところ、ω3にさらしたがん細胞は、あまりIL-6をつくっていませんでした。
したがって、ω3にはがん細胞の勢いを抑える効果があることがわかりました。
担がん患者さんにω3サプリを服用させた結果
楠教授は独自にω3サプリ(具体的にはDHAとEPA)を開発し、10人のCRP値が高い担がん患者さんに飲んでもらいました。独自ω3アプリを1日4g、1週間にわたって飲んでもらったところ、10人中8人のCRP値が低下しました。楠教授たちは、この独自ω3アプリを「がん患者の予後改善剤」として特許を出願しています。
まとめ~「後悔」を真剣に考える
がん治療医が使っているサプリや補助食品として、フコイダンとω3を紹介しました。いずれも「すごい」と感じたと思います。しかし、過度な期待は持たないようにしてください。
過度の期待とは「サプリや補助食品のほうが、がんの3大療法(手術、抗がん剤、放射線)より優れている」という考え方です。
iPhoneの生みの親、スティーブ・ジョブズ氏は、2003年10月に膵臓がんがみつかり、がん3大療法だけでなく、西洋医学による治療をすべて拒否して2004年7月に亡くなりました。ジョブズ氏が受けたのは、食事療法などの代替療法だけでした。
そして、ジョブズ氏の伝記を手掛けた作家のウォルター・アイザックソン氏は、ジョブズ氏が晩年、がん3大療法や西洋医学を拒否したことを後悔していた、と明かしています。
その一方で、がん3大療法だけを頼り、サプリや補助食品を含む代替療法を一切試さなかったがん患者さんのなかにも、後悔している人がいます。
がん患者さんによる治療法の選択は、人生をかけた究極の選択になります。その選択を後悔しないように、主治医の話をよく聞き、そして自身でもさまざまな「信頼できる情報」を入手してみてください。