サプリメントとがん

診断技術の上昇に伴い、がんの早期発見は年々されやすくなったといわれています。しかし、いまだに発見が難しいがんが存在します。発見時にはすでにがんが進行してしまい、多臓器への転移を認めることもあります。

また、治療には強い副作用を起こすことも多く、治療される方は非常に苦しいことも多いかと思います。がん治療はがんの根絶を目標にしていますが、この目標が達成できない場合は症状の緩和、改善やQOLの維持が優先されることもあります。

サプリメントは栄養補助食品や健康補助食品とも呼ばれ、日本では法律的に食品に分類されています。
サプリメントは薬とは違い、栄養素を摂取することで、体内の免疫力や活動をサポートするものと考えられます。
ですので、がんの程度や種類にもよりますが、サプリメントだけで治るということはほぼないでしょう。

外科的治療や抗がん剤の従来の治療に合わせて、ご自身の免疫機能を補助するサプリメントを効率よくとることで、がんと闘っていきましょう。

効率のよいサプリメントのとり方

まず、一般的なサプリメントの効率よい取り方をご紹介します。

皆さんはどんな時にサプリメントを飲むでしょうか?
貧血だから鉄、更年期障害だからイソフラボンなど、原因のみを取り除くような接種の仕方をされる方も多いのではないでしょうか。

もちろん、それでも効果はありますが、より効果的にサプリメントを活用できる方法があります。

まず、体の栄養や構造作りに必要なビタミンやミネラルを摂取します。
ビタミンやミネラルが過不足なく体内にあれば、様々な作用に協調して働くことができます。
必要な量を体内に入れることで、健康の土台をしっかりと作ります。

次に、健康状態の底上げとして抗酸化作用のあるサプリメントの接種を行います。

その後、ようやく不調対策に特化したサプリメントの摂取を行うと、健康のベースアップがすでにされているので、より効果があるかといわれています。

がんに効果的なサプリメント接種とは?

健康維持や不調の体側には、先ほどの順番で摂取するとより効果が期待されます。
では、がんにはどのようなサプリメントがいいのでしょうか。

先ほどのサプリメントのことを細かく紐解くとともに、がんとの関連性について述べていきたいと思います。

マルチビタミンとがん

サプリメントの基礎となるであろう、ビタミンやミネラル。販売されているマルチビタミンにはビタミンが数種類以上配合されており、中にはミネラルが数種類入っているミネラルとセットのマルチビタミンも存在します。

人間が体内で合成でないものは、ビタミンでは13種類(ビタミンA、ビタミンB群[B1、B2、ナイアシン、パントテン酸、B6、ビオチン、葉酸、B12]、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK)あります。
また、ミネラルはもともと合成することができないもので、その中でも、必須ミネラルは16種類(カルシウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、イオウ、塩素、鉄、亜鉛、ヨウ素、セレン、銅、クロム、マンガン、モリブデン、コバルト)です。

これらのビタミンやミネラルは野菜などに含まれており、以前はそこから摂取するだけで大丈夫でした。
しかし、現代では野菜などの摂取量が低下していること、また野菜自体も栄養価が低下しているためすべてを食品で摂取することは困難と考えられます。

そこで、全体的に不足しがちな栄養素を補えるマルチビタミンは有用でしょう。

また、マルチビタミンには予防ではありますが、長期的に摂取すると大腸がんのリスクが下がったという前向き研究が発表されています。

それぞれのビタミンやミネラルの抗がん作用

ではサプリメントで補ったほうが良い栄養素の抗がん作用について、代表的なものをお伝えしていきたいと思います。

ビタミンA・C・E

がんの進行を抑える抗酸化作用をもち、お互いが補い合うビタミンAとビタミンC、ビタミンE。これらは一緒にとったほうが良いとされます。また、ビタミンCは不安定な栄養素で、食品からとるのはやや難しく、サプリメントでの摂取がお勧めです。

ビタミンB2

抗酸化作用をもち、抗がん作用があります。ビタミンA、C、Eが補えない部分の過酸化脂質を分解・除去できます。

セレン

必須ミネラルです。がん細胞発生の原因の1つとして過酸化脂質があります。セレンはこの過酸化脂質の消去をサポートする働きがあります。

抗酸化サプリとがん

マルチビタミンは全体を補う働きをしていましたが、こちらはさらに抗酸化作用に特化したサプリメントです。
抗酸化サプリメントには、上記で述べたビタミンA,ビタミンC、ビタミンEの他に、CoQ10(コエンザイムキューテン)やグルタチオン、ポリフェノールがあります。

がんの悪性化を防ぐには抗酸化作用のあるものの摂取が望ましいため、これらのサプリメントはがんに対して有用ではないかと考えられます。

また、先ほどのビタミンと同様、互いに電子の交換をすることでより作用が大きくなるため、1種類ではなく、複数の摂取が望ましいでしょう。

サプリメント摂取のリスク

先ほどまで、サプリメント摂取をお勧めしてきましたが、これからはリスクについてお話しします。

食品と違い、楽に多く摂取できるのがサプリメントのいいところですが、反面過剰摂取の危険性が多く存在します。

セレン
体内のカドミウムや水銀を取り除いてもくれる万能なミネラルですが、取りすぎると爪の変形や脱毛を引き起こします。
脂溶性ビタミン(ビタミンD、A、K、E)
水溶性のビタミンは体外にすぐ排泄されるのに対し、脂溶性のビタミンは体内に残りやすく、過剰摂取による影響を及ぼします。
ただ、水溶性のビタミンもかなりの過剰摂取ですと、排泄が間に合わない場合があるので、こちらもやや注意が必要です。
マルチビタミン
すべてのビタミンを摂取することができる効率の良いビタミンですが、多くとりすぎてしまう可能性も高いです。
また、リスクではないですが、もともと体内で足りているビタミンをマルチビタミンで摂取したとしても、抗がん作用を発揮しない場合があります。最初から抗酸化作用の低かった人に著明な効果があったという例もあります。サプリメントの効果がある、ないの話が出てきてしまうのは、これが原因かもしれません。

また、食品同様に薬との食べ合わせによるリスクも存在します。
薬効の減弱や、命の危険性を及ぼすことがあるため、治療中の薬がある場合は必ず医師に相談してください。

さらに、サプリメントの中にはアレルギー症状を引き起こすものや、持病の悪化をおこす可能性もあり、注意が必要です。

サプリメントで失敗しないために

良かれと思ってサプリメントを摂取したのに、まったく効果がなかったでは悲しいですよね。悪化してしまった、なんてことになったら、元も子もなくなります。

サプリメントは食品の位置づけですが、食品よりも小さな粒でしっかり成分が入っているのです。
リスクを抑えるためには、薬と同様に用法容量を守ること、自分にあったサプリメントを選ぶことが大切です。
私たちには個人差があり、薬でさえご自身のがんにあったものを選択するのは難しいです。がんの治療で間違った選択をしてしまうことは、非常に危険なことです。

最善の治療の為には、専門の医師に判断していただくことが望ましいでしょう。

サプリメントに関しては、様々な意見の医師がいるかと思います。
頭から否定する医師、日常診療に取り入れようとする医師、サプリメントをとても勧める医師などに分けられるでしょう。

いまや、サプリメントの摂取を推奨している医師はたくさんいます。そして、私たちは医療機関を自由に選ぶことができます。そのような医師を探し、しっかりと相談をし、治療と併用してサプリメント摂取を行うことが大切だと考えます。

どうか、ご自身にとって最善の予防や治療が見つかりますように。