がんの発生のメカニズムと、食品の関係について紹介します。

がんは典型的な生活習慣病のひとつとして知られています。生活習慣の中で、食生活はがんの発症や進行、または抑制に影響するとされています。

では、がんはどのように発症し、どの段階で抑制することができるのでしょうか。

まず、がん発症の流れです。
どの正常細胞の中にあるがんに関連する遺伝子が、なんらかの原因で損傷をおこし、それが活性化・不活性化をおこすことで、正常細胞はがん細胞になってしまいます。
がん細胞とは、抑制のきかない細胞増殖を行う細胞で、無限に増殖することで正常な体の機能を障害するものです。
そうして、がん細胞は発生した場所で増殖し、また体の他の部分に浸潤し、転移していくのです。

がん細胞を発生させないことが理想的ですが、できてしまったがん細胞の増殖・浸潤を抑えることで、がん細胞の悪性化を防ぐことが可能です。
食品はがん細胞の増殖・浸潤をおこす悪性化を防ぐことができるので、がんが発見されてから使用される抗がん剤治療よりも、予防に対しては有利なのです。

食品に含まれる抗がん作用の種類とは

がん細胞の増殖と浸潤を抑制する方法は多少違いがあります。
増殖を抑制するための方法には、がん細胞を自殺に導くアポトーシス誘導や、免疫力を高める方法があります。
浸潤を抑制するための方法には、抗酸化作用などがあります。

そのため、抗がん作用のある食品は大きく分けて、2つに分類できます。
① 増殖と浸潤の両方を抑制
② 主に浸潤を抑制するもの

それらを詳しく見ていきましょう。

① 増殖と浸潤の両方を抑制する食品

お茶

お茶に含まれるポリフェノールの1種であるカテキン類には抗がん作用があるといわれています。特に茶カテキンは、正常細胞には作用せず、がん細胞にだけアポトーシス誘導をするので、がん細胞の増殖を抑制します。
また、カテキン類に含まれる抗酸化作用の働きにより、がん細胞の浸潤も抑制します。
カテキン類が多く含まれているのは緑茶の中でも煎茶です。また、ウーロン茶や紅茶に含まれるポリフェノールも同様の働きがあるとされています。

コーヒー

コーヒーの主成分であるクロロゲン酸の働きや抗酸化作用により、がん細胞の浸潤の抑制が細胞レベルで確認されています。
また、コーヒーオイルがアポトーシス誘導を示すことも確認されています。

穀物

麦などをはじめとした穀物に含まれるリグナンは乳がんや前立腺がんの予防効果があるとされています。リグナンそのものに抗酸化作用があり、がん細胞の浸潤を抑制することができますが、体内で代謝された物質には細胞の増殖の周期を抑制するなど、アポトーシス誘導を行います。

にんにく

1990年にアメリカの国立がん研究所で、デザインフーズ計画が発表されています。長年の研究データに基づき、がん予防に効果のある食品をデザイナーフーズとしてピラミッドの表にまとめてあります。
その頂点に書かれているのがにんにくです。
にんにくのにおいの元となるアリシンが酢や油に溶け込むと、アリル化合物に変化します。このアリル化合物がアポトーシス誘導を引き起こし、がんの増殖を防ぎます。

大豆

大豆に含まれるイソフラボンのうち、ゲニステインはがん細胞に対して増殖と浸潤の抑制をすることが知られています。とくに、リン酸化抑制など、浸潤に対しての抑制が強くでていることが研究されています。
ハワイ在住の日系人を対象にした研究では、味噌よりも大豆の摂取量が前立腺がんの発症を65%低下させた研究発表もあります。

② 主に浸潤を抑制する食品

にんじん

にんじんに含まれるカロテンは植物性のビタミンAと呼ばれています。カロテン類はビタミンAよりも抗酸化作用が強く、がん細胞の浸潤を防ぐ効果があるといわれています。
にんじんの他に、モロヘイヤや春菊、カボチャにも含まれています。とりやぶたレバー、うなぎなどに含まれる動物性ビタミンA(レチノール)はそのままでも吸収されますが、カロテンは吸収がやや悪いので、油と主に摂取したほうがよいです。

ブロッコリー

ブロッコリーにはビタミンCが多く含まれている食材です。ビタミンCは酸化されたビタミンEを還元して、再び動けるようにし、ビタミンEがビタミンAの酸化を防ぐ相互作用をもっていますので、ビタミンA、C、Eは一緒取った方がよいとされています。
また抗酸化作用だけでなく、免疫力を高めるとされているので、がん細胞の増殖抑制にも効果があるかもしれません。
ビタミンCは非常に不安定な栄養素で、水や熱、空気、光に弱い栄養素です。野菜を生で食べるか、短時間での加熱した温野菜として食べるのがおすすめです。とくにじゃがいもやさつまいもはデンプンがのりの役割をしてくれるのでビタミン流出を防ぐことができます。

青魚やウナギに含まれるビタミンEには先ほど述べた通りビタミンAの酸化を防ぐなど、抗酸化作用が認められる。他には油やナッツ類に含まれており、通常の調理に使用する油で摂取することが可能です。
また、魚の油には抗炎症作用もあります。外科的治療後に投与される脂質を含む輸液に魚油を投与すると、がん細胞の浸潤の低下を示すことが実験では明らかになったそうです。
食事として摂取しても、悪玉コレステロールのような脂質が活性酸素で酸化されるなどがん脂質異常症を防ぐことができるようです。

がん予防の食生活はバランスよく

紹介しました通り、それぞれの食品には、がんを予防する栄養素が含まれています。
いくら体に良いからといって、その食品だけを食べることはかえって体を悪くします。

がん予防に最適な食生活として

  • 緑黄色野菜を多くとる
  • 多くの種類の食材をとる
  • 変化のある食生活にする
  • 加工食品をとりすぎない

とあげられています。
抗がん作用が今のところないとされている食品でも、私たちには必要な栄養素であることが多いです。
その食品はとらず、抗がん作用のあるものだけを食べるというのは、がん以外の病気になってしまう可能性もありますし、免疫力の低下などで、がんをかえって増加させてしまうかもしれません。

また、偏った食生活の中に含まれる、ある食品の過剰摂取についても注意が必要です。
サプリメントのように手軽に大量にとることができないので、ある程度の量なら心配いりませんが、過剰摂取によりほかの病気を引き起こす場合があります。

例えば、にんじんに含まれるビタミンA(カロテン)や魚や油に含まれるビタミンEは油溶性のビタミンの1種です。
水溶性ビタミンと比べ、過剰になったものを体外へ排出することが容易ではないため、過剰摂取による病気を引き起こしやすいといわれています。

普段の食生活では多くの食材をバランスよくとることに心がけ、その中に抗がん作用のある食品を選んで摂取していくことが重要です。

最後に

死亡率第1位のがんを予防することは非常に有用であり、健康で長生きするためには必要なことだと思います。

しかし、先ほど述べたとおりバランスよく食材をとらなければならないし、どの食材をどのくらい摂取するのかを考えるのは大変かと思います。
また、苦手なものを撮り続けなければいけない場面もでてくるかもしれません。

毎日気にしすぎて、それが原因でストレスがたまるのもよくないことです。
食は人生にいろどりを与えてくれるものです。
たまには好きなものを食べてみるのもいいかもしれませんね。