世界各国で猛威をふるっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。手洗いうがい、そして人混みを避け外出するときはマスクをつけるなどで感染リスクを抑えることができます。
WHO Coronavirus disease(COVID-19)
しかし、どんなに気を遣ってもリスクをゼロにすることはできません。
そこで始まった研究が5-ALAの新型コロナウイルス感染症に対する効果です。ここでは、5-ALAにどのような効果が期待されているのかを詳しくご紹介します。
新型コロナウイルスとは
「新型コロナウイルス感染症はただの風邪だ」と言われる方もいますが、重篤化すると風邪とは比べものにならないほどの健康被害をもたらすものです。突然現れた新型コロナウイルスですが、具体的にどのような特徴をもつウイルスなのでしょうか。
SARS-CoV-2と呼ばれる新型のコロナウイルス
「コロナウイルス」の存在が確認されたのは、今に始まったものではありません。コロナウイルス自体は昔から風邪の原因として知られていました。一方で新型コロナウイルスは、従来のコロナウイルスとは違い、SARS-CoV-2と呼ばれるウイルスが原因です。
ウイルス名をSARS-CoV-2、新型コロナウイルス感染症のことをCOVID-19と呼んでいます。中国の武漢でウイルス性肺炎が多発したことで、新型コロナウイルスの存在が認知されました。
新型コロナウイルス感染症で見られる主な症状
よく見られるのは熱や咳、倦怠感です。一部の患者さんでは味覚や嗅覚の異常、頭痛や吐き気、下痢などがおこります。重症化すると呼吸困難や胸痛、38度以上の高熱などがおこり命に関わることもあるほどです。
最もよくある症状
- 発熱
- 空咳
- 倦怠感
時折みられる症状
- 痛み
- 喉の痛み
- 下痢
- 結膜炎
- 頭痛
- 味覚または嗅覚の消失
- 皮膚の発疹、または手足の指の変色
ただし、新型コロナウイルスに感染した人の約80%は特別な治療をすることなく回復するほどの軽い症状しか出ません。集中治療が必要になるのは5%ほどだと言われています。
リスクが高い方はとくに注意
新型コロナウイルス感染症を発症しやすいリスクとしては、次のものが代表的です。
- 60歳以上の高齢者
- 高血圧
- 糖尿病
- 肥満
- 癌
そのほかにも治療が必要な疾患を抱えている方はリスクが高いと考えられています。
新型コロナウイルス感染症の治療方法
新型コロナウイルス感染症の発症や重症化を予防する「ワクチン」はすでに開発され、医療従事者や高齢者から優先的に摂取が開始されていますが、ウイルスそのものを殺菌する治療薬はまだ開発されていません(2021年6月時点)。しかし世界中に患者がいること、重症化すると命に関わることから治療薬の開発が積極的に進められています。
まだ専用の治療薬がないため、現在は次のような代わりのものを使った治療がメインです。
デキサメタゾンの投与
デキサメタゾンはステロイドの一種で、炎症を抑えるはたらきと免疫機能が過剰にはたらくのを抑える効果があります。イギリスで新型コロナウイルスに感染した患者さんにデキサメタゾンを投与したところ、重症化した方に対して効果があることがわかりました。
また人工呼吸器をつけている方に投与した例では、デキサメタゾンの投与により死亡率を3分の1にまで減らすことに成功しています。
ファビピラビル(アビガン)の投与
ファビピラビルは、アビガンという製品名で知られるインフルエンザの治療薬です。新型コロナウイルス感染症への適用は承認されていませんが、患者156人を対象に投与したところ、ファビピラビルを投与しなかったグループと比べてウイルスを陰性化するまでの時間を短縮することに成功しています。
イベルメクチン(ストロメクトール)の投与
イベルメクチンは、ストロメクトールという製品名で知られる腸管糞線虫症の治療薬です。寄生虫の治療に使われているものですが、新型コロナウイルス感染症の初期症状に効果があるとして期待がもたれています。
感染者数の報告が世界最多となっているインドでイベルメクチンを使用したところ、感染者が減少しました。治療効果だけでなく予防にも使えるのではと考えられています。
5-ALAが新型コロナウイルスの感染を抑制させることを長崎大学が発見
現在は、新型コロナウイルス感染症の治療薬の開発と同時に、既存の医薬品で有効なものがないかを模索している状況です。そのようななか、5-ALAが新型コロナウイルスの感染を抑えるのに有効だという研究が長崎大学から発表されました。
5-ALAは、アミノレブリン酸とも呼ばれるアミノ酸の一種です。新型コロナウイルス感染症の原因であるSARS-CoV-2の培養細胞を使って感染実験を行ったところ、5-ALAに感染を強く抑える効果があることがわかりました。
まだ試験管上での実験に過ぎませんが、人の細胞に毒性がないこともわかっています。そのため、新型コロナウイルス感染症の治療薬として使えるのではと研究が進められています。
新型コロナウイルスの予防と5-ALAの関係性
5-ALAが新型コロナウイルス感染症の予防に効果があることは、ほぼ間違いのない事実でしょう。人の細胞に毒性がないことから、治療薬としても使いやすいことが考えられます。
予防に効果的な5-ALAの摂取量はまだ不明
長崎大学では引き続き、5-ALAが新型コロナウイルス感染症の治療に使えるのではと研究が進められています。しかし、5-ALAをどれくらいの量を摂取すれば予防や治療に効果があるのかまではまだわかっていません。
5-ALAが多く含まれている食品を大量に摂取するのは現実的ではない
5-ALAは、ワイン・甘酒・納豆などに多く含まれている成分です。健康維持のためにこれらの食品を摂取するのは問題ないでしょう。しかし、新型コロナウイルス感染症の予防を目的とした場合は、大量に摂る必要があります。
量がとても多く毎日続けるのは困難なため、食品から5-ALAを摂取するのは現実的ではありません。
ですが、最近では5-ALAに注目が集まったことで多くの企業が5-ALAを配合したサプリメントを販売しており、通販サイトや薬局でも気軽に購入できるようになっています。
5-ALAを摂取して免疫力をアップしてコロナ対策をする人も増えてきています。
5-ALAは新型コロナウイルス感染症以外の治療にも期待されている
5-ALAは新型コロナウイルス感染症の流行に伴って一気に知名度を上げました。さらに5-ALAにはさまざまな効果があることが以前より期待されており、これまでにも多くの研究が行われています。
癌の早期発見や治療
癌の治療として5-ALAはすでに使用されている成分です。5-ALAは体内でプロトポルフィリンIXという成分に代謝されます。プロトポルフィリンIXは癌細胞に集積する性質があり、さらに青色の光をあてると赤く発光することが特徴です。
そのため5-ALAを癌患者さんに服用してもらい、光をあてることで癌細胞がどこにあるのかを発見しやすくすることができます。現段階では膀胱癌の手術をするときに癌細胞を可視化する目的でアラグリオという医薬品が承認されています。
糖尿病
空腹時の血糖値を正常に近づけるはたらきがあるとして、5-ALAは糖尿病の血糖コントロールにも使えるのではと期待されている成分です。食事から摂取した糖が吸収される前に燃焼されるように促すことで、血糖値の上昇を抑えます。
脂質異常症
5-ALAは脂質の代謝を促すはたらきがあることが特徴です。脂質を効率よく代謝することで、血液中にコレステロールや中性脂肪がたまりにくい状態へすることが期待されています。脂質が血液中に増えると動脈硬化をおこし心筋梗塞や脳卒中を引き起こすリスクを高めるため、5-ALAを摂取することで健康維持に大きく役立てることができるでしょう。
不眠症
睡眠サイクルはメラトニンと呼ばれるホルモンが担っています。メラトニンは夜になると分泌が盛んになり、朝になると減ることが特徴です。5-ALAはメラトニンの原因であるセロトニンを増加させるはたらきがあるため、間接的にメラトニンの分泌を促すはたらきがあります。
メラトニンは自然に近い睡眠を促す不眠症の治療薬としても実際に使われている成分です。海外では睡眠の質を高めたい方向けのサプリメントとしても販売されています。
疲労軽減
疲労を抱えながら生活をしている方を対象に5-ALAを服用してもらったところ、疲労感を減少させることができたと広島大学の研究によりわかりました。5-ALAを摂取していないグループよりも有意に疲労感や仕事の捗り具合を改善することができたのです。そのほか、無気力や落ち込みなども改善できたと報告されています。
ネココロナウイルスの増殖を抑制
北里大学の研究で、5-ALAがネココロナウイルスに対して効果があることがわかりました。ネココロナウイルスは新型コロナウイルスとは別のものですが、猫が下痢や腹膜炎をおこす致死率の高い感染症です。
ネココロナウイルスを発症した猫は、90%以上の確立で死亡に至ると言われています。ネココロナウイルスの培養細胞が増殖するのを5-ALAが抑制したため、治療薬の開発に活かせるのではと期待されています。
まとめ
5-ALAは新型コロナウイルスの感染を抑える効果があると期待されている成分です。SARS-CoV-2の培養細胞を使った長崎大学の研究により、5-ALAが感染を抑えることがわかりました。ただし、まだ研究が進められている途中のため、5-ALAをどれくらい摂取すれば予防や治療に効果があるのかということまではわかっていません。
人の細胞に毒性がない成分で治療薬ができることが理想のため、5-ALAは新型コロナウイルス感染症の救世主となるのではと今後の研究に期待がもたれています。